『連分数のふしぎ』

木村俊一さんの『連分数のふしぎ』を読みました。

連分数のふしぎ (ブルーバックス)

連分数のふしぎ (ブルーバックス)

ブルーバックスですが、とても内容充実で楽しめました。書いてあることを確認するための練習問題が適切に配置されていて、読者が自ら手で計算することを促すようにしているのも素晴らしいです。

「分数ができない大学生」という言い方がはやりましたが、分数の足し算ができて、数の並びをたどる多少の辛抱強さがあれば、この本の大部分は楽しめて、数学の奥深さにふれることができます。

この本には参考文献が(本文中で特に言及される以外は)挙げられていないので、自分の備忘も兼ねて少し書いておきます(冒頭の写真の後ろに積んである本など)。

連分数といえば、最初に学んだのは高木貞治『初等整数論講義』の第2章「連分数」です。この本の第3章では、木村さんの本の第8章「フェルマーラマヌジャンの挑戦状」で話題になったペル方程式 も扱われています。

初等整数論講義 第2版

初等整数論講義 第2版

木村さんの本では、「連分数は行列と相性がよい」(p.304)と言いつつ、行列を知らなくても本文が読めるようにという配慮から、連分数と行列の関係については付録の数ページの記述だけになっています。これに関しては上の高木貞治の教科書にもちゃんと書いてありますが、やさしい本としては岩堀長慶『2次行列の世界』の第7章「2次行列の応用・ユークリッドの互除法と連分数」があります。この本は最近、サイズを大きくして復刊されました。このくらいの本を高校のときに教えてもらったら、数学が好きになる人も増えると思うんですが...

2次行列の世界 (新装版 数学入門シリーズ)

2次行列の世界 (新装版 数学入門シリーズ)

その後、連分数について何も勉強することはなかったのですが、再び連分数と巡り会ったのは山田先生の『組合せ論プロムナード』第7講「連分数」です。ロジャーズ・ラマヌジャン連分数の等式というすごい式が紹介されています。

組合せ論プロムナード

組合せ論プロムナード

そこから芋づる式に読んで楽しんだのが、野海先生の『オイラーに学ぶ』で、その第8章「連分数のこと」も、木村さんの本と重なる部分があります。この本には、オイラーの『無限解析序説』の原文(ラテン語)で連分数を扱ったところのコピーが載っていて、ラテン語を読む楽しみも味わえます。

オイラーに学ぶ―『無限解析序説』への誘い

オイラーに学ぶ―『無限解析序説』への誘い

木村さんの本の第9章「数当て再考」には、いきなり「周期とモチビックガロア群」なんて話が出てきて驚くのですが、この章は、次の本の「周期」と題する章(執筆者:コンツェビッチ、ザギエ)のイントロをわかりやすく紹介することを目的にしています。こういうことが知りたいから、数学者が書いた啓蒙書を読むわけです。14年前に買った本を少しだけ深く理解することができました。

数学の最先端 21世紀への挑戦〈volume 1〉

数学の最先端 21世紀への挑戦〈volume 1〉

あと写真に写っているのは次の本です。

Analytic Theory of Continued Fractions (AMS Chelsea Publishing)

Analytic Theory of Continued Fractions (AMS Chelsea Publishing)

これは、4年前くらいにちょっと連分数がマイブームになって勉強した本ですね。その頃、次のページのようなことを書きました。
『特殊函数』 - oculi mathematicae